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閑静な住宅街にある隼人の家から 歩いて15分の所にある地下鉄の駅。
そこから3分も乗れば人であふれかえる街に出られる。
香南は地下鉄から降りて途方に暮れた。
プレゼントを買うと慌てて出てきたのはいいが いったい何を買えばいいだろう。
しかも2000円以内ともなればまるで小学生の誕生日プレゼントじゃないか。
「あっ、香南じゃん!」
背中から知った声が響いた。
少し前まで一緒につるんでいた仲間の祐司だ。
身体の大きな祐司はとても高校生とは見えない。
しかも顔だって相当いかつい。
祐司はガムをくちゃくちゃ噛みながらニヤニヤと香南を見た。
「……祐司…」
隼人に昔の仲間とは手を切れと言われてから 祐司とは全く連絡を取っていなかった。
ケータイを番号ごと変えてしまえば たやすく縁は切れたように思えた。
「香南、このごろ冷たいじゃん。なんでいきなりケータイかえんだよ。連絡とれなくてこまってたんだぜ」
「悪い。俺、今いろいろ事情があってさ。金に困ってとうとう電気とかも止められそうになって それで……」
祐司はそこまで聞いて深く頷く。
いつも早とちりな祐司は 香南の話を最後まで聞いたことなんかない。
半分まで聞くといつだってそこから都合のいい解釈をはじめるのだ。
「そうかぁ。それでなぁ。とうとう親の所にで戻ったんだな。でも、お前の親って……その……お前と仲が悪かったよな」
親の所と言われて 香南は間違いを正そうかとも思ったが、なんだかわざわざ言うのも面倒になって 苦笑しながら頷いた。
「しかたねえなぁ。実家に住んでいるんじゃ そう好き勝手もできねぇな。わかった。しばらくはお前もいい子にしてな。そのうちほとぼりがさめたら そんときはまた声かけてやるよ。おまえんちの親って怖ぇからな」
祐司は勝手に納得して 深い同情の眼差しで香南を見た。
「ああ。そんときはよろしく」
じゃあと歩き始めたそのとき 祐司が思い出したように香南に再び声をかけた。
「そういやぁ 小倉さんが香南に会いたいって探してたけど」
小倉……その名を聞いただけで肩の傷がうずく気がした。
この傷をつけた奴。
「祐司、俺あいつに……」
「えっ?まさか!」
何かまた早とちりな誤解をしたらしい祐司は なぜか顔を赤らめた。
「って、なんでそういう誤解をするかな。あいつにさ、俺、切られたんだよ」
そう言って香南はTシャツの袖を少しまくって 治りかけた切り傷を見せた。
「はぁ?なんでそういうことになるんだよ」
祐司はまったくわけがわからないといった顔で香南の傷を見つめる。
「だからさ、俺、母親に嫌われてるだろ……で」
「ええっ?そこまで仲わるいのかよ。おまえよくそれで母親と一緒に住めるな」
「……まあな。だからさ、小倉さんには黙ってて」
「ああ、でもその親と住んでるんなら いくら隠しても無駄だぜ」
「わかってるよ」
俯いた自分の事を祐司は気の毒そうにみる。
「わかった。小倉さんには言わないよ。それはそうとお前実家で殺されないように気をつけなよ」
「ありがと」
香南は意識した途端に微かな痛みを感じる肩をぎゅっと抱いた。
「ところでさ、祐司だったら恋人から誕生日に何もらいたい?……あ、しかも2000円以内のもので」
自分で思いつかないときは人に聞くに限る。
香南は祐司の顔を伺った。
「はぁ〜?なんだよそれ。恋人って言ってもなぁ。俺いないし。しかも2000円ってなんだよ」
祐司はバカにしたように腹を抱えて笑っている。
「もういいよ。祐司に聞いたのばかだった」
「ごめん。なんでも嬉しいんじゃないの?恋人からならさぁ」
祐司は笑いながら言う。
香南はため息をついて歩き出した。
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