「みそらの仕事CMで見たか?」
「ああ」
若い男と隼人の低い声が聞えてきた。
静かに玄関を開けたのでだれも帰宅に気づいてないようだ。
「今日から一斉にポスターも貼られてるはずだ。しっかし勝手な女だなあれは」
「芸能関係なんてそれが基本じゃないのか?」
「まあ そうだが。飛び抜けてあれは酷いぞ。まあどっか病気と思った方がいいくらいだな。あれはまわりに公害だぞ。おまえのハニーの為だけじゃなく 社会の為に消えてもらった方がいいとおれは思ったぞ」
笑いながら男が話しているのは……香南はビクッと固まった。
「いや、社会の為じゃなく、俺の為に消えてもらうのさ」
若い男は吹き出して腹を抱えている。
香南は見てはいけない物をみた気がして玄関に戻り その戸を大げさに開けた。
「ただいまぁ〜」
緊張しながら入っていくと 二人の男は笑いかけながらこちらを見た。
「えっと、どなた?」
お辞儀をしながら香南が問うと 若い男はポケットから大げさな動作で名刺を出してきた。
「芸能プロダクション アルル代表 御堂進二」
声を上げて読むと進二はうなずいく。
「隼人のハニーちゃんだろ。お噂はかねがね」
ニヤニヤ笑う男が意味ありげな視線で香南の下半身を眺めた。
バコッと音がして進二が頭を抱える。
「進二、香南を見るな。そいつは俺のだ。おまえが見ると減る」
「ってぇ 何マジになてるんだよ。ったく狂ってるな兄貴は」
「兄弟……なの?」
兄貴という言葉に反応し二人の顔を見比べながら香南が尋ねる。
「ああ、兄貴は俺とは父親が違うがな。母親は同じだ。おれの父親はこいつの父親からお下がりの母を貰ったのさ」
聞いてはいけないことだったのかと香南は戸惑った顔で隼人を見た。
「ああ。その通りだな。お陰でお前の父親が助けてくれるから 非常に仕事がやりやすい」
「助けてるのは親父じゃなくて 俺だろう?」
「さあ どうだかな」
「やっぱり兄貴は狂ってる。なあ香南ちゃん」
香南は引きつった笑顔を作って進二に向けた。
「上等だ。だがきっとおまえほどおかしくないぞ」
「はいはい。じゃあ話はそういうことで」
進二はやれやれといったように手を振って帰って行った。
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