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香南は以前この進二が隼人と母の事を話していたのを見たのが初対面だった。
進二は隼人と違って どこから見てもカタギには見えない。
初めはその粗野な物言いや いかにも軽そうなところが鼻について 好きになれそうもないと思ったのだが 話してみると案外情ににも厚く 見た目ほど悪い奴でないとわかってきた。
どこまでも隼人を信頼している態度も香南を安心させた。
今では最初に抱いたような嫌悪感はない。
芸能プロダクションというのもアダルト系の妖しいものだと隼人は笑っていた。
どこか危ない男特有の緊張感はあったが それさえも今となっては人間らしいことの裏返しだとさえ受け取れた。
「何もないけど」
そう言って香南が冷蔵庫から出したお茶とゼリーを進二に勧め 自分の分を取りにいこうとすると 進二はぎゅっと香南の手を引いて自分の横に座らせた。
「ビデオ見よう……な?」
怪訝な顔で頷いて進二がセットし終わるのを待つ。
セットが終ると進二は香南の肩に手を回し逃げられないようにするみたいに肩を掴んだ。
ビデオはまだちゃんとしたものではないらしくいきなりボツとはじまった。
小さなベットの上に男の子が横になっている。シーツを頭までかぶって相手が来るのを待っているようだ。やがて金属音がしてドアが開き大学生くらいの男がバスローブで入ってきた。
これはっ!香南は息をのんで画面を見つめる。
「香南」
男のやさしげな声に少年はシーツのなかから小さくはいと答えた。
画面に見入っていた香南が息を飲んだ。
身体が小刻みに震えて止まらない。
ぎゅっと手を握る。
画面の中の少年は男のキスをたどたどしく受け入れ ちいさく声を発している。
「進二さん……これは?……なに?]
「あっちゃ〜やっぱ本物だったか。マジかよ」
進二は震える香南に事の重大さを再確認したらしく 参ったなと頭を掻いた。
「これ……俺だよね?」
「……ああ」
画面では少年が胸を啄まれ背を反らせている。
「はぁっ……っんん……」
ガシャンと後方から音がした。
振り向いた進二は鬼のような顔で画面を見つめる隼人を見つけた。
「まずっ」
沈黙の中で画面の少年のか細いあえぎが響く。
「やっ……はぁ……」
香南の目から知らぬ間に涙が流れた。
こんな事って……騙されただけならまだしも隠し撮りまでさせていたのだ。
しかもこれが隼人の目にさらされるというのは 自分はつくづく運がないのだろう。
きっともう……。
いくらなんでもこのテープの数を見たら だれだってひくだろう。
しかもこれが発売されれば隼人の恋人が男だと笑われるだけでなく AV男優と噂されかねない。
それならいっそ……。
香南は無表情に固まった顔で立ち上がり 隼人と目を合わせずに自分の部屋に向った。
「おいっ、香南」
後ろから隼人の声がかかるが 香南には それもどこか遠くで響く何かの音のように聞え早く早くという内側の声に急かされて 振り向きもせずに部屋へと向う。
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