ベットに座って考える。思考はまとまらずポロポロと落ちるようだった。
荷造りしたほうがいいのだろうか。
でも何処へ行く当てもなく 只消えることを望むのだったら 荷物はいらないのだ。

さようなら隼人……。

 


隼人に出会うかなり前から それは香南の選択肢にあった。

死の誘惑。

たくさんの死に方を検索した。
やはり痛いのや怖いのは避けたい。
睡眠薬を多量に飲むというのは ドラマでありがちなパターンだけど、実際そんなに多量に睡眠薬は買えない。
Drが少しづつ処方してくれたものを貯めるしかないのだ。

香南はあちこちの病院にかかり 睡眠薬を駅のロッカーに貯めで預けてあった。

 

 

今日あそこに行ってクスリを取ってこよう。

そして……。

「香南開けろっ!」
部屋の鍵をはずすと隼人が真っ青な顔で立っていた。

「はや…と…」
大丈夫かと耳元で問われ 頷きながら胸に顔を埋めた。

やさしい声が辛い。

 

あれから他のビデオも観たの?
こんな汚れた俺は嫌だよね。

たくさん聞きたい事があったが何も言葉にはならない。
だたやさしく髪を撫でる隼人に抱きしめられて居るのが辛い。
でも今はがまんしなきゃ。
もう少ししたらこの苦しみからも解放されるんだ。


「あの、隼人」
「なんだ?」
やさしく問われて声が小さくなる。

「ちょっと俺行かなきゃいけない所があるんだ」
きつい目で睨まれた。

「駅に預けてあるお前の大切なクスリを取りにいくのか?」
驚いて隼人を見上げた。

「どうして…それを?」
「香南、俺をなめるなよ。おまえの行動なんか全部調べてあるんだ。お前が浮気しそうになったらすぐわかるようにちゃんと全部お見通しなんだよ」

「浮気?そんなの するわけない」
「じゃあお前今俺から逃げてあの世へ行こうとしてないか?それだっておれにとっちゃあ同じことなんだよ。」

「……でも 昔にあった事 ビデオで観たら隼人だってきっともう……」
「俺も軽く見られたもんだな。あんなもの 今の香南と関係ないだろ。まあどうやってこの感じやすい身体に仕込まれていったのかはそりゃあ興味があるけどな。おまえが嫌がってる物を観る趣味はねえよ」

「でもあれ、売られるんじゃ」
熱い腕で ぎゅっと抱きしめられる。

「バカな。売らせるもんかっ」
香南は隼人の腕の中でしゃくり上げた。

「どんなことがあっても 香南を嫌いになんかならねえって誓っただろ?俺を信じられないのか?」


「……信じる」

「よおし」
隼人は香南の顎を上に向かせると その唇にキスをした。
やさしくて甘いキスだった。

「隼人……好きっ……はぁ…初めても隼人がよかった……乱暴に犯されたのも……隼人ならよかった……全部全部…隼人ならよかったのに……」
しゃくり上げる香南を 隼人はぎゅっと力一杯に抱きしめた。

「泣くな。今俺は このおまえがここにいてくれてよかったと思えるぞ」


……初めて知った。言葉ってあったかいんだ。

香南のほほをあたたかい涙が流れた。

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