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実は金がなくてバイトをはじめようと 面接に向かう途中だった。
セレブ専門の出張話し相手。
その内容が「お話」だけで済むなんてはじめから思っちゃいない。
結局は男にも女にもこの身体を売るのことになるのだろう。
少々抵抗はあるが学生で手に職もない自分が 手っ取り早く借金を返すためには 身体を売るという最後の手段しかないと思っていた。

付き合えの種類はよくわからないが どっちにしても この男にはお金がありそうだ。
一目惚れなんて言葉は信用できなくても 援助してくれるのならば たくさんの奴らのおもちゃになるよりも 一人専属のほうが楽かもしれない。
香南は混乱してくる頭で香南は必死に考えた。

「おい。返事は?嫌いかって聞いているだろう」
「別に嫌いじゃないよ でも好きでもない」

「そうか ならいいな」
なにがいいのかわからないうちに 自分の唇の上に男の唇が重なったのを知った。

「おいっ。やめろよ」
香南は渾身の力で男の身体を押し返した。
香南は悲しそうな目をしながら 口の端をわざとあげる。

 「じつはさぁ、俺いま金に困ってるんだよね。あんたが金を都合してくれるんだったら付き合ってもいいよ」

冷たい視線が突き刺さるようだ。
男は自分の事をどういうふうに見ていたのか大体は察しが付く。
昔から香南は 純心そうだの清潔そうだの可愛らしいだの
……まあうれしいかうれしくないかは別としても あまり人から悪いイメージを持たれたことがない。
それというのもモデルをしていた母親にそっくりとかそれ以上とか言われるこの女顔のせいだ。
16才は立派な高校生だが中学生に見られることもしょっちゅうだし……。

この男が初対面の自分に一目惚れなんて言うからには この顔が与えるいい印象をそのまま俺だと勘違いしているに違いないのだ。

……だったら、目は覚まさせてやんなきゃ。

……それでもいいってんならいっそ 面接もふいになったことだ 少しくらい援助してもらったって罰は当たらないだろう。

男は急に蔑んだような目で香南を見た。

「そうか、ならそうしよう。金に困ってるんだったな。だったらお前は今日からここに住め。必要な金は全て俺が出そう。だが、もちろんただじゃない。おれはお前のことが気に入ったとさっき伝えたはずだ。意味することはわかるか?」

ここに住むなんて いきなりな話だ。
しかも俺のイメージが壊れても諦めない気なのか。

「早く返事をしろ。俺は待たされるのは嫌いだ」

……ったく待たされるのが好きな奴がいるのかよ。
そんなの俺様な性格なだけじゃん。

文句の一つも言い返そうと口を開きかけた香南を 男は面白そうに見ながら言った 。

「まあいい。百歩譲って今日は返事を待ってやろう。だがこの傷は待てないな。向こうの部屋に医者が呼んである。手当を受けろ」

赤く腫れている傷口を消毒してもらい抗生物質の点滴を受け 香南は夕方すぎにやっと自分のアパートに帰った。

帰りは運転手が運転する男の車で送られた。

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