お母さんへ

お母さん。
ありがとう。

お母さんのおかげで 僕は隼人に会えました。
僕の顔を見るのがとてもつらかっただろうにそれでも育ててくれてありがとう。

言えなかったけど 大好きでした。

お母さん。

大好きです。

ありがとう。

    本当のお母さんの子供になりたかった香南より


手紙を持つ隼人の手が震える。
叫びだしそうな声をぐっと飲み込み隼人は静かに言った。

「進二、あの女を呼べ」
隼人は もしやと怪訝に見つめる進二をにらんだ。

「聞こえないのか?早くあの女をここに連れて来い」
うなずいた進二は立ち上がり電話をするために歩いて行った。

 

 

 

 

この資料を見ろ と隼人はベンチでそっぽを向くみそらにファイルを手渡した。
それにはまだ今朝調査会社から報告されたばかりの書類がはさんである。

「何よ これ」
「おまえと妹のことだ」
 妹と聞いてみそらは おずおずとファイルを手にした。

「そこに書いてあるのは俺が独自の調査機関で調べさせたものだ。信憑性は確かと保障する。」
みそらがページをめくるとそこには同じ顔の双子が笑って写っていた。

「みさと……」
「そのみさとはおまえを愛していた。もちろん姉妹愛もあるが 違う意味でもな」
 みそらは自覚はしていたものの 否定を続けてきた事実を他人に突きつけられて固まった。

「そのみさとは愛するみそらに幸せになってほしいがために おまえの夫と契約を交わしたんだ」
どういうこととみそらは隼人を見上げた。

「おまえがあの男を気に入ったと知って あの男にみそらを幸せにしてほしいと頼みにいったんだ。 男はどうやらその顔は好みだったらしな。だがおまえのきつい性格は好まなかったのだろう。そんなとき同じ顔のしおらしい妹が おまえを頼むと言いに来たんだ。ずるい男なら考えそうな事だ」

「そんな」
「みさとが自分のものになるというのなら みさとと結婚してもいいと」

「だって みさとは そんなことは何も言わなかった」
切れ切れに掠れる声でみそらは呟いた。

「そんな事を言える性格だったのか そいつは」

ファイルの中で笑うみさとは 純真な目をしていた。
いつも自分のことよりみそらを想ってくれる妹だった。
あの男の事が好きだと言ったとき みさとは悲しい目をして自分を見たことを みそらは思い出した。
そしてその想いが叶いそうも無いと告げると 大丈夫よと頭を撫でてくれた。

あの日どうしてと攻め寄るみそらに ただただ俯いてごめんなさいとくりかえすばかりだったみさと。
あの男と寝たのは 私の為だったというのか。
みそらは好きになった男にも 今まで分身のように想い合い寄り添ってきた妹にも同時に裏切られたと思いこんでいた。

「その自分を捧げた行為は おまえへの愛だな。その結果が香南というわけだ」

「……そんな」
言葉を失ったみそらに 隼人は封筒をつきつけた。
「遺書だ」
震える手で封を開ける。

 

 

 

ううっと肩を震わせるみそらの嗚咽が廊下に響いている。

 

「おまえを殺そうと思ったが香南に止められた。子供としておまえに愛されることがあいつの夢……だそうだ」

みそらは手にした香南の遺書を握りしめた。

 

 

 

 

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