すぐにそのキスは情熱的なものなり 香南に少し残ったプライドも溶けていくように感じる。
……なんだか感じすぎてキスだけでおかしくなりそう。
「香南、好きだよ。かわいい」
耳元に口を寄せ 隼人が低い声で言う。
耳から電流が走ったように身体中が感じる。
可愛いと言うなと言おうとした言葉も甘いあえぎに呑み込まれてしまう。
「はぁ……んんっ…」
「そのいい声 いっぱい鳴いて 聞かせろ」
耳からまた低い声を吹き込まれて香南はまた大きく震えた。
…………だるい…。
身体中から力が抜けて 指の先さえ動かせない。
香南は薄目をあけて辺りをうかがった。
あいつ……隼人は近くに見えない。
なんだよぉ。
恋人って起きたときにも抱きしめててくれるんじゃないのかよぉ。
胸の中で愚痴りながら何気なく窓の方を見る。
夕焼け……ええっ?……何時間経ってるんだろう。
だんだん目がさえてきた香南は そっと自分を見る。
全裸だった昨日とは違い ちゃんとバスローブが着せてある。
香南がそっと手で自分の身体を触ってみるとサラサラとしているから たぶん隼人が拭いてくれたのだろう。
いきなり昨日の自分の痴態が蘇り 香南の顔が一気にまっ赤になった。
ハッキリ言って今までだって 男との経験はある。
でもあんなに感じたのは初めてだった。
なにがなんだかわからなくなって 狂ったように隼人を求めてしまった。
隼人は優しくて そして熱かった。
隼人の指先からその想いが流れ込んでくるように その触れられた部分全てがしびれるように感じた。
自分の快楽よりも 香南を傷つけないことを最優先に ゆっくりととろとろになるまでそこを解されて指だけで何度か気を失いそうになった。
挿入された大きなものはその想いと一緒に香南の身体をいっぱいに満たし、抜き差しの度に愛情を感じられた。
どんな言葉よりもそれは俺に対する気持ちを表しているようで うれしかった。
ほんとに単純にうれしかった。
だから香南は 信じる事にした。
……たとえそれがどんなにバカみたいでも。
あいつのことなんか 何にも知らない。
何も知らないけど でも 自分に対する気持ちが本物ってわかればそれでもういいんだ。
カチャリとドアが開き 隼人が入ってきた。
初めて逢ったときのような 見るからに高そうなスーツをビシッと決めている。
その姿に見惚れている自分を香南は秘かに自覚した。
きっとバカは自分のほうだ。
「起きたのか。昨日は……その……ムリさせたな……大丈夫か?」
隼人は俯いて モゴモゴと口ごもった。
「ぷっ」
香南は吹き出した。
だって超絶クールなスーツ姿と 恥ずかしそうな言葉が あまりにもミスマッチでおかしいったらない。
「なんだ。元気じゃないか。心配することなかったな」
隼人は温かく笑って香南を見つめた。
あ、俺……好きだ。
隼人が……好き。
温かいその目に 身体の奥の凍っていた物が すっと溶けていくのを感じる。
隼人のこと何にも知らないけど でも 好きだよ。
心の中だけで呟いて 香南は溢れそうになる涙をぐっと堪えて 隼人を見上げた。
「…ちぇ、おい。それは反則だぞ」
「何が?」
「自分がどういう顔してるか知らないのか?今俺を煽って 後で辛いのはおまえだぞ」
熱い隼人の視線に急に心臓がドキドキし始めてしまう。
「はぁ?煽ってなんか……ないよ」
そう言いながらも香南は隼人から目が離せない。
……で、やっぱり 隼人の言うように 辛い目にあったのだ。
いいやもう これがまともじゃないって百も承知してる。
好きだからいい……例えそれが 隼人の気まぐれなゲームだとしても。
後悔はしない。
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